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初夜の後遺症は根深くて

Penulis: 天岸あおい
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-11 11:02:29

   ◇ ◇ ◇

――朝、目が覚めて一番に思ったこと。

あー……あり得ねぇ夢見たな、だった。

そして起き上がったら素っ裸で。

下半身がものすごく気だるくて。

百谷家側の窓の前にある光のモヤモヤが消えてなくて。

俺のパジャマも、アイツが着ていた服も床に散らばっていて――。

「……はぁぁぁぁぁぁぁ……」

昨日の強制ファンタジック初夜、全部現実だった……。

夢でも見ねぇようなことするんじゃねーよ……と、俺は朝から肩を落とし、激重なため息を吐き出した。

思い出したら悶絶して一日終わりそうな気がして、なるべく無心になって身支度を済ませ、朝食を済ませて家を出る。

ガチャッと家に鍵をかけて道に出れば、まるで示し合わせたかのように隣の家からケイロが出てきた。

俺に気づいてジッと見つめた後。ケイロは優越感いっぱいに微笑みながら近づいてきた。

「昨夜はよく眠れただろ、花嫁殿?」

「……寝たっていうより、気絶させられたようなもんだろ……やりすぎだってアレは……っ」

俺を魔法でおかしくした挙句、好き勝手に抱きまくった張本人。

その顔を見たらどうしても昨夜のことが脳裏によみがえって、俺の顔が熱くてたまらなくなる。

耐え切れずに俺はケイロより前に出て、さっさと学校に行こうと一歩前に踏み出す。

背後から早歩きで俺に迫って来る足音が聞こえた。

「待て。言いそびれていたが――」

ぽんっ。ケイロが俺の肩を軽く叩いて話しかけてくる。その途端、

「……ッ! ぁぁ……ッ」

昨日ケイロから散々教え込まれた感覚が――腹の奥からこみ上げる疼きが、俺の全身を駆け巡ってしまう。

思わず膝から力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまった。

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    頬を引きつらせながら睨む俺に、ケイロは口先でも謝ることなく話を進めてくる。「まずはボールを持ってパスの構えを取れ」「こ、こうか?」「そのまま投げる動作をする際に、ボールを強く意識しながら『火の精霊よ、共に駆けろ』と口で命じれば火をまとう」「……それだけでいいのか?」「ああ。これでボールが相手に渡る瞬間に火が消える」なるほど、じゃあさっきのボールも俺が完全に取っていたら火は消えていたのか。事情が分かれば安心して取れる。でも、手元が狂ったって言ってたよな?他にも何かある気がして、俺はケイロの顔をうかがう。「やればすぐできそうなんだけど……注意点とかあるか?」「思考が乱れると火の精霊が混乱して、内容にブレが生じる。だから投げることに集中する必要があるな」「……さっき俺にパスした時、百谷は何か考え事でもしてたのか? 手元が狂ったなんて言ってたの、気になったんだけど……」「図書室のことを思い出して、今晩は大智をどう啼かせようかと考えていた」まさかのむっつり発言に、ブハッ、と俺は吹き出してしまった。「考えるなぁ……っ! あと明日に響くから、今日はやめろ。頼む、マジで。一試合も保たずにスタミナ切れ起こしそうだから!」どれだけ俺とヤりたいんだよ!?コイツ、本当に顔と中身にギャップあるな。むっつりエロ魔人め……。一回が長いし、始まったら一回で済まないから寝るの遅くなるし、体力がっつり使い果たしちまうから寝ても全回復できねぇ。だから体育の授業が午前中にあったら、いつもよりバテるのが早い。そんな状態で球技大会に出たら、初戦の途中でバテて無様な姿を晒すことになっちまう。俺の切実な訴えに対して、ケイロが不敵に笑う。「却下する、と言いたいところだが、校内の行事でも負けるのは嫌だからな。明日

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    ◇◇◇体育館に行くと、ケイロは自分から進んでバスケットボールを取りに行き、ゴール下で軽くドリブルをし始めた。「太智、肩慣らしにパスの練習に付き合え。可能なら俺の真似をしろ」「……? ああ、いいぞ。さあボールくれよ」自分を真似しろだなんて、随分と自信あるんだな。やけにケイロの鼻高な言動が引っかかったが、俺は何も考えずに胸元で両手を構える。ビュッ、とケイロからボールが素早く投げられる。――間近に迫るボールの周りに、火の揺らめきが見えた。「なぁ……っ!?」思わず俺は身を翻してボールを避ける。ダン、ダダン……と体育館の端にボールが跳ねていく。追いかけて拾おうとすれば、まだ薄っすらと火が点いていて、俺は慌ててドリブルしまくって鎮火した。「こぉぉぉら! 百谷ぁ……っ!!」元に戻ったボールを抱えて、俺はケイロの元まで疾走して迫る。感情任せに怒鳴りたいところだが、どうにか小声に抑えつつ全力で訴える。「お前なぁ……火の魔法を使うなよっ! 他のヤツらはともかく、俺は火傷しちゃうだろ!」「すまない、手元が狂った。太智に届く手前で火が消えるはずだったんだが……まあこれで分かっただろう。さあ、お前も同じようにやってみてくれ」至極当然といった様子で、ケイロがさらっと信じられないことを言ってくる。思わず俺は拳を握って震わせた。「ついさっき初めて精霊出せた人間にやらせようとするな!」「……? 俺はそうやって叩き込まれたんだが」それはもう不思議そうな顔で、ケイロが首を傾げる。皮肉でも自慢でもない、本心からの言葉。いきなり王族の裏事情が垣間見えて、俺は思わず押し黙ってしまう。スゲー呑み込みの早い天才肌だと思ってたけれど、実はそうならないといけない状況に迫られ

  • 寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~   司書の舞野先生

    どうして俺をそんなにお前にハマらせたがるんだ!?できることなら胸ぐらを掴んで、思いっきり揺さぶりながらケイロに聞いてしまいたい。でもコイツに触られてしまうと脱力して、そんな気概も気力も奪われて骨抜きになってしまう。熱く溶けてしまった目でケイロを見つめながら、薄く開いた唇を持ち上げ、俺は新たなキスを強請る。もうこれが答えだと言いたげに、ケイロの目が笑う。そして俺の体が望んだままに唇を近づけて――。「古角、そこにいるのか?」若い男の声が聞こえてきて、俺たちはハッと我に返る。小さく舌打ちしながらケイロが離れ、俺はかろうじて戻ってきた力を振り絞って、崩れ落ちないよう膝に力を入れた。俺が本棚から顔を覗かせて声の主を見ると、そこにはボサボサ髪の冴えない男――司書の舞野〈まいの〉先生がいた。「こっちにはいませんよ。古角なら、さっき俺たちと入れ違いで図書室を出て行きました」古角というのは悠の名字だ。俺の話を聞いて、舞野先生は額を押さえながら大きく息を吐き出した。「しまった、入れ違いになっちゃったか。古角が探していた本が見つかったから、渡したかったんだが……」「良かったら俺が明日渡しますか? 同じクラスですし」「いや、僕が自分で渡すよ。ありがとう……えっと……坂宮君」俺の制服の胸元についている名札を見てやっと俺の名前を言うと、舞野先生は踵を返して離れていく。行ってくれた……怒られなかったってことは、俺たちが何をしていたかには気づかなかったのか。良かったぁぁ。あからさまに俺が安堵していると、ケイロはもう見えなくなった舞野先生の背を追うように、さっきまで居た場所を睨んだ。「……あの男と古角は仲が良いのか?」「悠は昔から本をよく読んでるから、図書室にも頻繁に出入りしているんだよ。だから司書の舞野先生と雑談することもあるらしいし、好きな作家のことで話が盛り上がる時もある

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